武士と茶道 こぼれ話

茶室は武士の密談の場

現在は政治家が料亭で密談するように、江戸時代、茶室は単に茶を点てるだけでなく、武士同士の社交の場、或いは密談の場としても使われていました。

「一服いかがですか」と言えば不審に思われることなく相手を誘うことができ、通常少人数しか入れない小さな個室のような造りになっている茶室は密議を行うには最適でした。

にじり口と武士の刀

茶室の入り口にあたる“にじり口”は、手をついて低く体を屈ませないと入れない造りになっています。武士にとって刀を取られることは命を預けるも同然のこの時代に、一歩茶室に入れば、身分や上下の貴賤の違いを超えて全ての人が平等であるべき、という利休の精神が反映されています。

石州流の「握りこぶし」と「お辞儀」

石州流の基本姿勢では正座したひざの上で軽く握りこぶしをつくりその中に親指を隠します。そしてお辞儀をする時は深々と頭を下げず浅めにします。(写真)

これもまた武家茶道特有の理由があり、刀を持つ親指をなくすことは命をなくす事を意味することから、いかなる時も大切な親指を守り、お辞儀をしながらも、周囲の気配に気を配り用心していた武士の習慣の名残と言われています。

畳の縁を踏むべからず!

高価な畳の縁は踏むと傷みやすいという理由の他に、武家茶道特有の理由として、茶室の下に潜んでいるかもしれない陰謀を企む者に、畳と畳の間から突然剣で刺される危険を回避するためとも言われています。

茶室に入る前に、刀を預けて無防備な状態の武士は茶室の中でも細心の注意を払っていたことが伺えます。