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ご挨拶
江戸時代、武士は国を治める為政者として立派な人となるため、人格形成に努めておりました。 この様な時代背景の中で武士の茶の湯は修養的な意味を持っていました。石州流の流祖、片桐石州は大徳寺玉室宗珀和尚に参じ「萬里一條の鉄」の考案で悟ったと言われています。それは国を越え、民族を越え、時代を越え、壮大な世界の中にも、絶対に曲がらない普遍的な真理があると私は解釈します。茶道の追究は人間道の追究であり、本質の追究へと繋がります。武家茶道の精神の真髄である自尊他尊は自分を敬い、同時に相手を敬う心。
ここには普遍的な真理があると考えます。大切な命を敬い生かし合う。亭主のたった一碗に込めた相手への思い。その思いを受け止める客人。相手を大切に思う心を形にして伝えることができるのは茶道の大きな特徴です。
まさしく「茶道は愛」
資本主義社会の恩恵を受け、物質的に豊かになり科学技術が進歩し、世界の情報が瞬時にわかる現代、この様な時代だからこそ、ひと時でも清々しくゆったりとした静かな時間の中で自分と向き合い、対極にあるものが混在する世の中で血の通う暖かい人間の交わりが求められていると思うのです。武士のたしなみの中で培われた自尊他尊の精神を持つ武家茶道は新しい時代を築く方々やリーダーにこそ身に付けてほしいと願っています。
過去と現代、日常と非日常が交差する時空の中で、昨日より今日、今日より明日と高みに向かい一歩一歩、己を高め、お互い敬い認め合い、暖かい人間関係を築き、そこから夢や希望に満ちた新しい力が生まれ、そしてその輪が広がって日本の中だけでなく世界の人達と分かち合えた時、きっと世界の平和が来ると信じています。
同時に人間が生きるこの地球も大切にし人間の手で守って行かなければ人間の幸せはありません。先達が守り続けた江戸時代からの伝統を守り、新たな時代に石州流伊佐派は「世界平和」と「環境保護」への強い思いを行動に移し、日本そして世界の人達と共に紡いで行きたいと思っています。
石州流伊佐派九世
磯野宗明